テレビ万有時報vol.118
「今でも”夢の装置”かな・・・の巻」

いつにも増して、大きな話題や事件が多かったこの数日。その分テレビを見る機 会も多かったけど、このテレビ好きなあたくしでさえウンザリだったのが泰葉さ ん騒動。痛々しいと言う人もいたけど、ああいう情緒不安定な状態の人をそのま ま出しちゃうのって節操無さ過ぎ。ネットと違って、一定のフィルターを通し、 ある種の『仕事』がしてあるのがテレビだと思ってたんだけど・・。

そんな時、テレビを改めて見つめ直すような気分で拝見したのが「テレビの可能 性・吉田直哉が残したもの」という番組(NHK総合、11/3放送)。以前、何かで 名前だけは何度か聞いたことのあった有名な元NHKディレクターで、テレビを 『夢の装置』だと言い、テレビ誕生時から最前線で常にその可能性を探し続けて きた方。大河ドラマやドキュメンタリーの演出を数多く手がけてこられましたが、 この秋亡くなられました。

番組はいかにもNHKらしい生真面目な雰囲気で始まり、最初は「うーん、最後 まで行けるかしらん?」とやや不安になったけど、吉田さんの作品が流れ始める とグイグイ引き込まれて行きました。

ドキュメンタリーの草分けと言われる「日本の素顔」という番組で、ヤクザをテ ーマにした回では「よくこんなの撮れたなぁ、撮らせてくれたなぁ」と吃驚。だ って、思い切り彼らを否定する内容なんですもん。当時の吉田さんを知るゲスト の方によれば、交渉時に率直に「ヤクザを肯定するような描き方はできない」と 伝えたことで、逆に親分から「その度胸が気に入った」と言われたんだとか。

さらに面白かったのは、賭博の撮影をした時のエピソード。警視庁は「金が本物 でなければいい」と言い、また博打打ちたちも「本物でやったら俺たちパクられ るから、自分たちの金じゃなければいい」ということで、小道具としてNHKか ら40万円のお金を持ち込んだのだそう。関係各所全部が了解済みの、今なら正 真正銘「ヤラセ」だということになってしまうんだけど、当時はそれはそれで楽 しむ文化があったと、後に吉田さん自身が語られていました。

もう約50年前のことで、今なら確実に関係各所オールNGもの(笑)。だけど 単純に善悪の問題ではなく、その頃の日本・その頃のテレビにはどこか大らかと 言うのかのんびりと言うのか、いちいち粗探しをしてエキセントリックに攻撃し て騒ぎ立てる現在とは、明らかに違う気風があったんだなぁと。それはそれで羨 ましいような気がしました。

また今なら放送上はばかれるような言葉や表現も多いけれど、そこに悪意のよう なものは感じられませんでした。突っ込まれたら困るから自主規制するというよ うなガチガチの縛りではなくて、誰もが「大人のほどほど感」のようなものを身 に着けていたのかもしれません。今より機材もテクニックもかなり遅れていたは ずなのに、ずっと自由で豊かな感じさえしました。

吉田さんが夢の装置と呼んだテレビ、これからもそう在り続けられるのか・・ち ょっとフクザツですね。。



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